日本ではヨーガとはアーサナ(ポーズを取ること)というイメージが先行していますが、実はヨーガの重要なトピックは心にあるという事をご存知でしょうか?また、その心とは何を指すのでしょうか?また、それはわかりやすく「ヨーガスートラ」で説かれています。それでは具体的にどのような事が書かれているのかを見ていきましょう。
1.何故ヨーガをするのでしょうか?
自分が何故ヨーガを行っているのかを考えた事はあるでしょうか?始めたきっかけは何だったでしょうか?また、一体何の為にヨーガを行っているのでしょうか?
「柔かくなりたい」「リラックスしたい」「健康になりたい」「痩せたい」など様々な理由があるかと思います。個々の動機、目的が何であれ、突き詰めると「幸せになりたい」からと言えるのではないでしょうか?幸せになる為にヨーガを行うのは素晴らしい事ですね。勿論それもヨーガの目的として正しい事です。
それではヨーガスートラにおけるヨーガの目的とはどの様に書かれているのかを見ていくことにしましょう。
2.ヨーガスートラにおけるヨーガの目的
パタンジャリによって編纂されたヨーガスートラは4章195節からなる短い言葉を連ねたものです。
インテグラル・ヨーガ (パタンジャリのヨーガ・スートラ)
その内容はヨーガの理論から始まり、実修、成就について続き、最後に宇宙哲学的な視点から論じるというヨーガのガイドブックといえます。その中で最初にヨーガの定義を論じています。
(ヨーガとは心の作用を止滅させる事である。)
鋭い人であればこの言葉だけで充分も言われているこの一文に、全てが集約されています。それでは「心の作用を止滅させる」という事を紐解いてみましょう。
3.こころ(マインド)について
「心」という言葉は英語で「mind」と書かれるものを指します。知性が宿り、意識、思考、判断などの働きをする場所です。アーサナの最中に「お腹空いた。終わったらお茶しよう」と思ったとします。これは「こころ(=mind)」の作用であり「こころ」に欲求の波が起こっている状態です。
「こころ」とは自分を写す鏡でもあるので、波が起こっている状態では自分の姿も波打って本来の姿を写せません。大きな波であればその歪みも大きく、本来の姿からかけ離れてしまう事でしょう。この波を完全に静めて本来の「私」を正しく写す「こころ」というのが止滅している状態です。
波が起こりにくくなり、穏やかに保てるようになっていくので結果的に皆が欲しいと願う「幸せ」にも近づいていけるのです。
4.日々のヨーガでの向き合い方
「こころ」を止滅させる事がヨーガの目的だと知ったうえで、何が出来るのでしょうか?解脱を目指す出家僧ではない人も「こころ」を静かに落ち着けていく事は可能です。まずは日々のアーサナを繰り返す事から始めてはいかがでしょうか。
大切なのは呼吸を心地良く保てる状態でキープして穏やかな呼吸に意識を向ける事です。無理をすると「痛いけど頑張らなきゃ」と「こころ」が動き出して呼吸も乱れるかもしれません。その場合は少し緩めて心地の良い呼吸を繰り返せる所まで戻りましょう。
穏やかな呼吸でアーサナを日々繰り返す事が第一歩です。続けていくと少しずつ穏やかで波の立ちにくい「こころ」になっていく事に気付くでしょう。それはストレスを感じにくくなったり、苛々する事が減るなどの変化として表れます。
おわりに
ヨーガの目的「心の作用を止滅させる」事は誰でも日々の練習で少しずつ近づいていける事がおわかりいただけたかと思います。「こころ」を止滅させる事は幸せにも近づいていく事です。よく唱えられる「シャンティ」は平穏、至福という意味ですが、ヨーガの目的を知るといつもと違った感覚で唱える事が出来るかもしれません。
日々のアーサナを穏やかな呼吸と共に繰り返し、平穏な「こころ」になっていく事を願っています。
フリーのヨーガ講師。年に一度はインドのアシュラムを訪れてヨーガとアーユルヴェーダを学んでいます。スタジオだけでなく、お寺、カフェ、公民館、野外と求められている場所に出かけていって、いただいた知識を調和の為に多くの方達とシェアする事をモットーに生活に取り入れられる知識として伝えていく活動を行っています。