人間を樹木にたとえると、上下逆にした形で、根が脳にあたり、そこから下に向かって神経という枝が伸びている。
脊柱はさしずめ幹であり、神経は脳から脊柱に下り身体全体に枝を伸ばしている。

動脈、静脈神経は身体中にエネルギーを配る経路(ナーディー)であり、アーサナで身体を鍛えると、経路内の障害を取り除きプラーナの流れをスムーズにする。
神経がもつれあうと、心身は安定しない。不安定な状態では、プラーナーヤーマはできない。ナーディーに障害があると自己の本質、物事の核心がつかめない。

アーサナの実践は神経を強め、シャバーサナは乱れた心を静める。
神経の働きが堕落すると心も堕落する。神経が緊張しすぎると心も異常緊張する。
心がリラックスし、静まり感じとる力がないとプラーナーヤーマの実践は不可能である。

現在世界は、平和の探求のために冥想と古代からのプラーナーヤーマの効果に大変興味を示している。
初めのうちは誰でもたいへん興味を示すが、繰り返し練習しなければいけないことと、進歩がゆっくりなので飽きてくるというような点から、たいへん難しい道である。
一方ヨガの各種アーサナの方は、意識が統一されると同時に、効果がすぐ身体の各部分に行き渡るので、いつも進歩していると実感できるので喜びがある。
プラーナーヤーマの実践では、注意はまず鼻腔、副鼻腔、胸部、脊柱と横隔膜なので、意識を身体の他の部分にわけることができない。
したがって心身が息の流れを感ずることができるまでは、プラーナーヤーマの効果を感ずることができない。
あまり進歩もなく、何ヶ月も何年もすぎてしまうこともある。
しかし、まじめで堅実な努力により、また忍耐によって、求道者の心はコントロールされた呼吸の流れを感じとることができるようになる。
このときプラーナーヤーマの美と芳香を体験することができ、何年か後にその妙味をたたえることができるのである。

引用:ヨガ呼吸・瞑想百科